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日経トレンディ2005年11月号に掲載されました ![]() ![]()
掲載記事
同窓会で自分の原点を再発見最近、同窓会への関心が高まっている。若い世代の間でも頻繁に行われているのが、従来と異なる点だ。幹事代行のサービスなど、関連ビジネスも生まれている。全世代に広がる同窓会ブームが意味するものは何か――。 今の時代の閉塞感から抜け出したいと願う人の姿が見えてきた。 「ひさしぶり〜、元気だった?」
こんな声があちらこちらから聞こえてくる。都内にある公立中学校の同窓会での光景だ。
12年前の卒業以来、初めての同窓会とあって、互いに照れくさそうで、なんとなくぎこちない。「女性は化粧をしているから、誰だか全くわからない」と苦笑いする男性もいる。ところが昔話が飛び出すと、あっという間にタイムスリップ。2時間後には90人全員が一体となって校歌を熱唱記念撮影の後は、二次会、三次会へと続き、場を仕切る幹事の河野松平(27才・会社員)が、「いい加減に帰ってくれ〜」と、困り果てるほど、大いに盛り上がった。
同窓会が改めて注目されている。従来の“リタイア後の楽しみ”としてだけでなく、20〜30代にまで同窓会ブームが起きている。100人以上の大規模な同窓会から数人が集う小さな同窓会まで、規模もいろいろだ。
なぜ今、同窓会なのか――。
前世代に共通しているのは、「原点回帰」だ。昔の仲間に会うと、輝いていたあのころの自分に戻れると、皆が口をそろえる。「本当の自分」を見つけ出し、夢や希望を再び思い返す。そして自分を活性化する。この原点回帰こそが、多くの世代を同窓会へと導く要因になっている。
自分探しのために。今、同窓会を開いた河野が同窓会を開こうと思い立ったのは、「自分探しのため」だった。社会人になって5年たち、仕事に慣れてきた今、「このままでいいのか」と思い始めた。仕事にやりがいは感じているが、自分の可能性は他にもあるような気がしてならない。転機、起業、ニート・・・・・・と、多くの選択肢が頭の中を駆け巡る。そんなとき、原点に戻り、本当の自分を探すことを思いついたという。まだ20代。前だけを見て走り続けていられる年齢という気もするが、「これだけ選択肢の多い時代に生きていると、このままでいいのかと立ち止まりたくなる。そういう意味では50〜60代と変わりはない」と、河野は言う。
富山で開かれた市立中学校の同窓会で幹事を務めてた丹保美枝(31歳・派遣社員)も、過去と向き合いたくて、同窓会を企画した。
中学時代、どちらかというといじめられっ子だった丹保は、長い間、自分に自信が持てずにいた。片思いをしていた人のことを時々思い出し、会いたいと思っても、踏み出せなかったという。しかし30歳を過ぎ、同窓会の幹事を買って出た。「ボランティア活動や子育てを経験して、いつの間にか人の役に立つことが自分の生きがいになっていた。だから同窓会も、声がかかるのを待つのでなく、自分で開こうと思った」と丹保は言う。今の自分なら、昔の仲間に胸を張って会える。そんな自信が丹保を動かした。
同窓会では思わぬ収穫もあった。中学時代、まるで目立たなかった自分に、多くの人が感謝の言葉を送ってくれた。それが何より嬉しかったという。
同窓会は、いじめられっ子だった丹保に、トラウマを乗り越えるチャンスを与えてくれた。
同窓会が長年の気まずさを解消するきっかけになったという男性もいる。丹保に声をかけられ、幹事を一緒に務めた藤田勝久(31歳・会社員)と阿部竜(31歳・会社員)だ。
2人は中学1年のとき親友だったが、些細な事が原因で大げんかに発展。同じ高校に進学してもなお、口をきくことがなかったという。とはいえ、お互いに忘れる事はできず、郷土を出て、別の道を進んでも、「いつか謝りたい」と思い続けていた。
その思いは、高校の同窓会でかなえられた。14年ぶりに仲直りができ、今回の中学の同窓会へとつながった。
実は彼らの通った中学は1学年16クラスもあったマンモス校。ところが3年生のときに新設校ができ、中の良い者同士が離ればなれになってしまった。「だから、できるだけ多くの人を集めたかった。16クラスの総数は約700人。今回は150人だったので、次回は300人を目標にしたい」と幹事を務めた阿部は意気込む
今回、幹事たちは、クラスごとでなく、150人での記念撮影を希望した。あのころ共有した時間を、17年たった今も同じように共有したい――。一枚の写真にはそんな思いが詰まっている。
昔の仲間を尺度にして自分の人生の総括をする同窓会ブームの背景には、インターネットの力もある。
9年前に、同窓生同士がネットを通じて交流できるようにと作られた「ゆびとま」。登録されている学校は約5万校あり、会員になると、同じ学校の卒業生と交流ができる。
コミュニケーションサイトは多々あるが、「ゆびとま」は匿名でなく、実名で交流できるのが特徴だ。96年のスタート以来、右肩上がりに会員は増え、現在は約320万人。需要はまだまだあると、ゆびとま副社長の蒲原幸也は言う。「現在、会員の中心は30〜33歳だが、同窓生との交流を最も求めているのは45歳以上。ところがその世代はネットを使えない人も少なくない。潜在的な需要を含めて2000万人は見込める」
そう話す蒲原自身も50歳。同窓会は「今の自分の立ち位置を知るためにもなくてはならないもの」だという。
「50歳前後は、子供が独立し、個に戻る年齢。」これまでの人生をこれでよかったのか振り返り、今の自分がどこに立っているのかを知りたくなる。その尺度となるのが、昔の仲間なんです」
キャリアの総括をするなら会社の同期でもいいが、人生の総括をするには昔の仲間が必要だと、蒲原は強調する。
蒲原の中学校では、数年前の同窓会をきっかけに、登山やダンスなど趣味の合う同窓生が集まって、年に20回も小同窓会が行われている。蒲原も、声がかかると積極的に参加する。
100人単位の大規模な同窓会をきっかけに、20人前後の小規模な同窓会を頻繁に開くようになったケースはけっこうある。少人数のほうが、集りやすいからだけではない。多くの人が、少数での同窓会を望んでいる。
伊村孝幸(51歳・会社員)は、卒業25周年を記念して開かれた高校の同窓会で仲の良かった友人と再会。昨年に引き続き、今年もその仲間たちと12人の小同窓会を開いた。
伊村は、「大勢が集る同窓会に比べ、小同窓会は気がラク」だと言う。今回集った12人は、かつていいところも、悪いところも見せ合った仲間。腹を割って話すことができるし、若い頃を思い出して元気になれる。しかし違うクラスの仲間や、距離を置いて付き合っていた友人には、つい見栄を張ってしまう。「昔の自分を知らない相手には、今の肩書きや立場で付き合うしかない」(伊村)からだ。
伊村のように「同窓会では見栄を張ってしまう」といった意見はほかにもあった。「勝ち組だと胸をはれるが、負け組みだと出席しづらい」(42歳・男性・会社経営)、「幸せな結婚をしていないと、片身が狭い」(32歳・女性・会社員)といった声だ。
今の自分を引きずるとつらい。しかし、昔一緒にふざけ合った友達なら、そんな思いも不思議とぬぐい去れ、素の自分に戻れる。「今さら、かっこつけても始まらない。たとえリストラされていても会える」(45歳・男性)ということなのだろう。
小規模な同窓会は、本当の自分に戻れる“癒やし”の場になっている。
同窓会専門ビルも登場
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